電気は私たちの生活を支えるインフラの中でも最重要のひとつです。その根幹となるのが「発電・送電・配電」を担う電力分野。発電所で生まれた電気を高電圧で送電し、変電所を経て低電圧に変換、最終的に家庭や工場に届けられます。
電力系の電気設計に携わると、回路設計や制御盤とはまた違った「大規模電力システム」の専門用語に直面します。打合せや図面に出てくるのは「UHV」「GIS」「CT」「VT」「B/H」「SF6」など、大学ではほとんど触れなかった略語ばかり。新人設計者が最初に戸惑うポイントです。
ここで重要なのは、電力系の用語は“スケール”と“規格”に直結しているということです。たとえば送電電圧を知らないと系統構成が分からず、保護機器の意味が理解できなければシステム全体の安全設計に関われません。逆に、最低限の略語を知っていれば系統図や仕様書を読みこなせるようになり、会議でも的確に理解できるようになります。
この記事では、発電・送配電に関わる設計者がまず押さえておきたい略語を「超初級編」「一般用語編」「規格編」に分けて整理しました。ここにない語句は特殊な分野や会社独自の呼称である可能性が高いので、遠慮なく先輩に質問してください。
1. 超初級編(大学+電力基礎)
略語 | 意味 |
---|---|
V | 電圧 |
A | 電流 |
W | 電力 |
kW | キロワット(実効電力) |
kVA | キロボルトアンペア(見かけ電力) |
kWh | 電力量 |
Hz | 周波数 |
PF | 力率 |
AC | 交流 |
DC | 直流 |
GND | 接地 |
TR | トランス(変圧器) |
2. 一般用語編(電力系実務)
略語 | 意味 |
---|---|
UHV | 超高圧送電(Ultra High Voltage) |
EHV | 特別高圧送電(Extra High Voltage) |
HV | 高圧(High Voltage) |
LV | 低圧(Low Voltage) |
GIS | ガス絶縁開閉装置(Gas Insulated Switchgear) |
OPGW | 光ファイバ複合架空地線 |
CT | 電流変成器(Current Transformer) |
VT/PT | 電圧変成器(Voltage Transformer / Potential Transformer) |
B/H | 母線(Bus) |
CB | 遮断器(Circuit Breaker) |
LBS | 負荷開閉器(Load Break Switch) |
DS | 断路器(Disconnecting Switch) |
LA | 避雷器(Lightning Arrester) |
SF6 | 六フッ化硫黄ガス(絶縁用) |
AVR | 自動電圧調整器(Automatic Voltage Regulator) |
AVR-G | 発電機用AVR |
AVR-T | 変圧器用AVR |
SC | 短絡(Short Circuit) |
OC | 過電流(Over Current) |
UV | 不足電圧(Under Voltage) |
OV | 過電圧(Over Voltage) |
GR | 地絡保護(Ground Relay) |
OCGR | 過電流地絡継電器 |
OCR | 過電流継電器 |
DGR | 方向性地絡継電器 |
SOTF | 投入時短絡保護(Switch On To Fault) |
AVR | 自動電圧調整器 |
GEN | 発電機(Generator) |
TURB | タービン |
BATT | 蓄電池設備 |
DG | ディーゼル発電機 |
3. 規格・関連用語
電力系は法令・国際規格に強く依存する分野です。
略語 | 意味 |
---|---|
JEC | 電気学会規格 |
JIS | 日本工業規格 |
IEC | 国際電気標準会議 |
IEEE | 米国電気電子学会規格 |
ANSI | 米国規格協会 |
PSE | 電気用品安全法マーク |
電技(電技解釈) | 電気設備技術基準の解釈 |
電事法 | 電気事業法 |
ISO | 国際標準化機構 |
EMC | 電磁両立性 |
RoHS | 有害物質規制 |
まとめ(増量版)
電力系の分野は、スケールの大きさと規格の多さが特徴です。発電機から送電線、変電所、配電設備に至るまで膨大な機器が存在し、それぞれに略語や専門用語があります。新人にとっては圧倒される世界ですが、ここに挙げた基本用語を押さえるだけでも大きな一歩です。
特に UHV、GIS、CT、VT、CB、母線(B/H) などは日常的に登場するキーワード。これを理解していれば図面の全体像を追えるようになり、設計レビューでも会話がスムーズになります。
一方で、このリストに含まれていない略語や呼称は、会社独自のものか、特殊な案件でしか使わないものです。そうした場合は臆せず質問してください。「基礎用語を調べた上で質問している」と先輩に伝われば、むしろ信頼を得られるはずです。
電力分野の設計は社会インフラそのものを支える責任ある仕事です。まずはこの用語集を足掛かりにし、徐々に系統設計・保護協調・国際規格の理解へと進んでいきましょう。